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大阪で働く法務パーソンのはなし

今年の会社法改正で何をしなければならないの? ※1/27追記あり

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追記あり

今年3月から改正会社法が施行されます。法案成立時は、「まだ先だなぁ」と思っていたのに、気づけば目前に迫ってきました。勉強を怠っていたので非常に焦っています。
法律事務所の作戦なのかもしれませんが、「会社法がこう変わります」というのはたくさん教えてくれるものの、「いつまでにこれをしましょう」ということはあまりちゃんと教えてくれません。会社法施行規則の公布が昨年末だったという事情があるかもしれませんが、施行日(と株主総会)が迫ってくると、TODOリストが欲しくなるので、とりあえずのものを作ってみました。でも、自信があまりありません。

改正の概要ー機関関係

改正の概要は法務省のみならず多くの法律事務所やリーガルテック系企業が紹介してくれていますが、そのうち、上場企業に適用がある機関まわりの改正には、次のようなものがあります。
特に断りのない限り、改正後の条文です。

  1. 株主総会資料の電子提供制度の創設
    →上場会社では義務付け(振替法159条の2第1項)
  2. 株主提案権の濫用的行使の制限(議案要領通知請求権を行使できる議案数の上限が10/総会に)(会社法305条4項)
  3. 取締役の個人別報酬等の決定方針の策定義務化(会社法361条7項)
  4. 取締役の報酬等として株式・新株予約権を付与する場合の数の上限等の株主総会決議義務化(会社法361条1項3〜5号)
  5. 取締役の報酬等(確定額)の総会付議時の相当性の説明義務化(会社法361条4項)
  6. 補償契約の取締役会決議義務化(会社法430条の2)
  7. 役員等のために締結される保険契約(D&O保険)内容決定の取締役会決議義務化(会社法430条の3)
  8. 一定の場合に業務執行を社外取締役へ委託可能となる規定の新設(会社法348条の2)
  9. 社外取締役の設置義務化(会社法327条の2)
  10. 議決権行使書面や代理権証明書の閲覧請求権の濫用的行使を制限する規律の新設(会社法310条8項、311条5項)
  11. 開示の充実(株主総会参考書類と事業報告(3、6、7関連))(会社法施行規則74条1項5号・6号ほか)
  12. その他(成年被後見人等関連)→省略

経過措置など

1は、2022年頃の施行が予定されているので、今年はスルーでOKです。

2は、改正前に行使された場合は、現行法が適用されます(附則3条)。8週間前までの行使が必要なので、3月総会の企業は現行法が、6月総会の企業は改正法が適用されることになりそうです。

3〜5は、経過措置がないので、3(決定方針)は、準備万端であれば施行前の2月の取締役会で、現実的には3月の取締役会で決議しなければなりません。4、5は、付議するなら3月総会・6月総会とも対応が必要です。

6と7は、施行後に締結されるものに適用されるので(附則6条・7条)、3月以降に更新する場合は取締役会決議が必要です。役員改選のタイミングで更新するのが自然に思われるので、3月総会でも6月総会でも、改正対応が必要になりそうです(当社はなぜか期首に更新決議するので対応不要…)。

8は、経過措置なしですが、使う予定もなし。

9は、施行後最初に終了する事業年度に関する定時総会終結時までは義務がないので(附則5条)、3月総会の企業は今年は対応不要で、6月総会の企業は対応が必要です。すでに設置している上場企業が多いと思われますが。

10は、改正前に行使された場合は、現行法が適用されます(附則4条)。

11は、煩雑です。まず参考書類について、改正により、役員選任議案には、締結予定の補償契約やD&O保険の内容を書かなければなりません。これは、施行日後に締結される補償契約・D&O保険について適用されるので(会社法施行規則附則2条6項)、今年、役員選任議案があれば、原則は記載が必要です。重任役員については、施行日前に更新しておれば不要に読めるのですが、それで良いのかしら。

==1/27追記===

見逃していたのですが、先週、全株懇モデルが改正されており、そこには、次のような記載がありました。どの役員についても更新予定があるはずなので、役員選任議案があれば新任か重任かに限らず参考書類への記載は必須なんですね。建前上は更新するか、するとしてどんな内容にするかわからないのに、ここまで書くの?という気持ちもありますが、統一されるので株主からすれば違和感が少なくていいと思います。

 

また、改正会社法施行前に役員等賠償責任保険契約を締結済の場合、当該役員等賠償責任保険契約は、株主総会参考書類への記載を要しないため、施行後最初の株主総会については、「締結する予定があるとき」に記載が必要となる。役員等賠償責任保険契約は、通常1年更新であることから、「締結する予定があるとき」とは、株主総会参考書類作成時において、次回更新時に候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を更新する予定があることを指すことになる。この場合の記載例は以下のとおりである。

記載例

4. 当社は、役員等賠償責任保険契約を保険会社との間で締結し、被保険者が負担することになる…の損害を当該保険契約により填補することとしております。候補者は、当該保険契約の被保険者に含められることになります。また、次回更新時には同内容での更新を予定しております。

ー2021年1月22日付「会社法改正に伴う各種モデルおよび事務取扱指針の改正について」P.8

==ここまで===
また、社外役員についても記載の充実が図られていますが、こちらは施行日後に末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より前に開催されるものは、改正法は適用されせん(会社法施行規則2条7項・8項)。その他、施行日前に招集手続が開催された株主総会の参考書類については、現行法が適用されます(会社法施行規則2条9項)。

事業報告については、施行後に締結された補償契約・D&O保険には改正法が適用されます(会社法施行規則2条10項j)。その他は、施行後最初に終了する事業年度に関する定時総会にかかる事業報告から適用されるので、3月総会の企業の多くは、今年は対応不要の一方、6月総会の企業は対応が必要です。

つまり…TODOはこう?

以上から、3月総会と6月総会の企業では、冒頭の絵のようになるはずです。が、自信がないのでもう少しよく勉強しなければ。

改正会社法施行規則を見やすいレイアウトで見る方法はないものか…