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大阪で働く法務パーソンのはなし

2021年に施行(改正)される法令

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1月が終わってしまいましたが、今年施行される法令のリサーチがようやくできました。毎年、年末にやっていたのに、年が明けたどころか1月が終了。理由は、改正会社法に手こずったからです。。
会社規模・業種にもよりますが、法務パーソンは、会社法以外はあまり気にしなくてもよさそうです。

法改正情報を「契約ウォッチ」で

かねてより、施行日ベースで法改正情報を入手するのが大変だと不満を漏らしてきました。ところが、LegalForceさんが「契約ウォッチ」というオウンドメディアを立ち上げられ、契約レビューに役立つ法改正情報を施行日ベース、しかも解説付きで提供してくださっています。ものすごくありがたい。今回は、こちらのサイトにもとてもお世話になりました。

keiyaku-watch.jp

2021年の主な法改正ー1月

  • 著作権法
    主要な改正点は、違法ダウンロードの範囲が、映画・音楽からすべての著作物に拡大されたことです。そのほか、文書提出命令の要否を判断するために、「まずは見せて」と裁判所が書類の提示を求めることができるようになるといった改正がありました。
  • 育児・介護休業法施行規則
    時間単位での取得が可能になったり、取得できる労働者の範囲が拡大されたりしました。社内規定の改定も忘れずに。
  • 労働者派遣契約の電子化
    「電子化できない困った契約番付」があれば、横綱クラスといっても過言ではない労働者派遣契約について、ついに電子化が解禁されました。

2021年の主な法改正ー2月

  • 巨大IT規制法(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)
    売上高3000億円以上の巨大プラットフォーマーに適用される法律で、出店者への情報開示が義務付けられるといいます。当社も巨大プラットフォーマーに出店していますが、今のところ何も変わる気配なしです…
    ニュースを見ていると、他国と比べると緩い規定で実効性に欠くのでは?という指摘もあるようです、
  • 商業登記法施行規則
    印鑑登録が任意になったり、商業登記電子証明書以外の電子証明書でも登記申請等ができるようになったりします。
    設立登記申請に印鑑届出がいらなくなるなんて、もう別世界にきた感じです。今しばらくは印鑑届出&印鑑証明書の実務は続くでしょうけれども。
    また、商業登記電子証明書以外の電子証明書でも登記申請等ができるのは喜ばしいですが、「●●株式会社 代表取締役●●●●」という電子署名がよい場面も多いので、eシール的なものが生まれない限り、当面、商業登記電子証明書の取得は増えていくような気もします。マイナンバーカードに搭載されているものだと、さすがに代わりに誰かが…というわけにもいかず、大きな企業だと社長に頼みづらい。

2021年の主な法改正ー3月

  • 会社法
    先週の記事のとおりです。その後、いくつかのセミナーを受けたり、証券代行の資料を読んで判明・確認したことは、次のとおりです。この煩雑な手順、みんなどうやって理解しているのだろう…
    ちなみに、もっともわかりやすかったのは、証券代行の資料でした。さすが。
    ①報酬等方針は、できれば2月中に決議したほうがよい。
    ②役員選任議案では、施行日以後に締結(更新)される補償契約・役員等賠償責任保険契約については、参考書類に記載が必要(=つまり全員記載が必要)
    ③招集決議が3月以降であれば、社外取締役の期待される役割や報酬等議案の相当性について、改正法に則した参考書類への記載が必要
    ④補償契約・役員等賠償責任保険契約が施行日後に締結(更新)されれば、事業報告への記載が必要→おしりは事業報告作成時=監査役に提出する直前?まで。
    有価証券報告書との記載事項とは必ずしも整合しないので注意
  • 障害者法定雇用率の引き上げ
    延期されていましたが、2.2%から2.3%へ。しかし、都会では取り合いのため採用が難しいという現実…
    知的障害や精神障害のある方をオフィスで雇用するのは難しいこともあって、最近は、地方など農作業してもらう仲介業?が人気です。個人的には、雇用率を稼ぐためだけに本業でもない農作業をさせ、オフィスでの雇用を減らして人件費を下げることを助けるやり方に違和感を持っているのですが。私たちが目指しているのはそういう社会じゃないだろうと。

2021年の主な法改正ー4月

  • 意匠法
    複数意匠の一括出願制度が始まります。「一意匠一出願」じゃなくなるのか、というとそうではないのですね。物品の区分はなくなるけれど、7条の見出しは「一意匠一出願」のままです。意匠はとても身近なのに、書籍も専門家も少なく、なかなか理解を深められない分野です。特許事務所からの営業はやたらあるので、あちらから見ればブルーオーシャン市場なのかも。
  • 高年齢者雇用安定法
    70歳までの就業を確保するなどの努力義務が課されます。そうしたほうがいいのはわかりますが、体力仕事の多い職場だとなかなか難しいですよね。
  • 労働施策総合推進法
    労働者300人超の企業では、中途採用率の公表が義務化されます。高ければ/低ければいい、というものではないですけれど、オープンになるのはいいことですね。
  • 労働基準法
    36協定などで押印欄が廃止されます。じわじわ脱ハンコが進んでいます。

2021年の主な法改正ー6月

  • 食品表示
    食品リコールをした際の届出が義務化されます。

2021年の主な法改正ー8月

  • 薬機法
    法令遵守体制整備の義務化や虚偽・誇大広告への課徴金制度が導入されます。

その後もさらに…

施行時期は未定(来年以降)ですが、法務パーソンにとって重要・関心が高いものとして、公益通報者保護法個人情報保護法、2段階目の会社法株主総会資料の電子提供制度開始など)の改正などがその後も控えています。他にもきっと、脱ハンコが進むだろうし、知財法の改正もまたあるでしょう。

ほかにメインの仕事があるので、これらを全部ちゃんと追いかけるなんて無理だし、する必要もないというのが私の立場でして、「なんか、そんなのあるらしい」くらいの情報だけ触れておけばいいとうちのメンバーにも言っています。その代わり、できるだけ鮮度と信頼性のある情報のソースを持っておきたいですね。