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大阪で働く法務パーソンのはなし

法務と監査

今日は、法務と監査をテーマに。

結論を先に書くと、「ポジションは違えど、大きな目的は同じ。監査はもっと法務の手を借りるべきではないか?」と考えています。

監査は無茶苦茶な仕事

監査というのはかなり無茶苦茶な仕事だと思います。

国際的な内部監査人の組織であるThe Institute of Internal Auditorsによれば、内部監査の使命は、「リスク・ベースで客観的な、アシュアランス、助言および洞察を提供することにより、組織体の価値を高め、保全すること」です。

事業部門(第1線)や管理部門(第2線)がそれぞれ専門性を発揮して取り組んでいる業務のすべてについて、濃淡をつけるとはいえ「ちゃんとやっているか、改善点はないか」と目を光らすなど、とんでもない大仕事です。それゆえ、監査部員は、業務に精通していることが望ましい。しかし、我が社のように複数の事業ドメインを有し、一定規模の管理部門を抱えてしまっている企業では結構難しいです。実際、我が社の監査部員の経験職務は限定的ですし、部門長経験者も監査部長自身のみです。

よって、いくら監査部員が重要会議の資料や稟議書へのアクセス権を持っているとはいえ、こんなに多様複雑化している業務のすべてをモニタリングするなんて無理な話で、リスク・ベースで濃淡つけようと言ったって、リスク評価をすることが難しいのではないかと思います。リスクマネジメントとリンクさせるなどの工夫はありますが。

監査は法務や他部署の力をもっと借りればいい

以前、こんなことがありました。監査部から「調達部門の内部監査を行うので、下請法について教えてほしい」という依頼があり、1時間ほどレクチャーをしたのです。

しかし、調達部門で心配すべき法律は下請法だけではないし、下請法に関して言えば、毎年国から書面調査を受けていて、調達部門の回答を法務は保存しています。コンプライアンス違反をテーマにするのであれば、法務に対し、調達部門がしてきた相談内容を聞いたり、法務で把握している懸念点を聞いて裏どりをするほうがよほど効果的ではないでしょうか。(断られましたが…)

法務としては、各部門が自分たちを規制している法令やルールを把握しているか、その動向の把握に努めているかが気になりますし、契約書などの重要書類も適切に作成・管理しているのか、せっかく往査に行かれる監査部に見てきてほしいのですが。

内部監査は、独立性を極めて重んじる職種です。とはいえ、あくまで経営者の目の代わり。もっと社内のリソースを活用して、監査の質を向上させても罰は当たらないはずです。IIAが定める内部監査の使命は「組織体の価値を高め、保全すること」だと謳われていますが、これは法務がパートナー機能とガーディアン機能を発揮することで実現しようとすることと同じです。

他社さんに聞いたベストプラクティス:法務は法務で監査する

最後に、他社さんに教えていただいたプラクティスをご紹介。

その企業は、日本のBtoBでは超一流企業で、海外にも拠点をお持ちなのですが、「監査は契約書が読めないので、各子会社の契約書●通を取り寄せて、気づき事項をフィードバックしています」とおっしゃっていました。

海外企業の現地での契約書について、日本の本社がどこまで口出しできるのか?という疑問もありますが、「本社がチェックする」という仕組みだけでも牽制機能としては価値があるのではないかと思います。何より、本社と子会社でそういうやりとりができるラインがあるということが素晴らしい。

私たちも何かできることをしていかねばなりません。