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大阪で働く法務パーソンのはなし

外部送信規律の対応いかに

2023年6月16日、改正電気通信事業法が施行されました。対応に当たられたみなさん、誠におつかれさまでした。正解がわからない中、担当してくれたうちのメンバーにも心からの労いを。

外部送信規律には「とりあえず対応しておけ」?

今回の電気通信事業法の改正では、「電気通信事業者」か、「第三号事業を営む者」であって「利用者の利益に及ぼす影響が少なくない電気通信役務」を提供しているものは、その電気通信役務において

  • 誰に
  • 利用者のどんな情報を
  • 自社及び送信先において何のために 送信しているのか

を、利用者に確認する機会を付与しなければならなくなりました(法27条の12、規則22条の2の29)。

「利用者に影響を及ぼすことが影響が少なくない電気通信役務」とは、以下のいずれかとされます(規則22条の2の27。以下は総務省のFAQ(問1-9)を引用。)。

  1. 利用者間のメッセージ媒介等
  2. SNS、電子掲示板、動画共有サービス、オンラインショッピングモール等
  3. オンライン検索サービス
  4. ニュース配信、気象情報配信、動画配信、地図等の各種情報のオンライン提供

これを読むと、自社ECサイトや消費者向けのアプリ・ウェブサイトを制作・提供する一般的なB2C企業は、2号と4号に抵触する可能性があるのかな?という気持ちになるのですが、総務省はこのように説明してくれています(以下のリーフレットの右側参照)。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000862755.pdf

ということは、自社のようなごく普通のB2C企業は、外部送信規律の適用はないということでいいのでは…

ところがですね、法改正のセミナーを受けに行くと、

 

「各種情報のオンライン提供」というのは曲者で、自社事業に関係のない情報を発信している場合は対応しておいがほうがいいですよ

と、まことしやかに言われるわけです。
実際、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインの解説には、以下のような記載があります(7-1-2)。

電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインの解説 p.253

B2C企業は、消費者を惹きつけるためにあの手この手で情報提供しているわけで、そこまで言われたら「念のためやっておこうか」になるじゃないですか。

お手本がない!

そんなわけで、結局対応することになった我々。

まずは、「各種情報のオンライン提供」と言われかねないサービス・サイトを洗い出すところから始めました。これは、普段から全社の法務の仕事をしていればさほど難しくはありません。

問題は次です。誰のどんなサービスでプログラムを仕掛け、何を外部送信をしているのか、その目的は何か、を把握しなければなりませんが、法務もそこまでシステムに明るくないし、担当者も実はよくわかっていない。
さらに悪いことに、法が求める最低限の対応に加え、「オプトアウトの方法を示せばなお良い」などと言われ、先行対応されている企業が現に採用していることで、「オプトアウトの方法があるなら書く」がデファクトスタンダードになりつつありました。これらも併せて代理店や委託先に聞いてもらい、なんとか形にしてもらいました。実際には、眉唾もの情報もあったから、我々でひとつずつリンク先の当否を確認したのですが…

書かないといけない情報を収集するかたわら、法務では、それらをどこにどのように書くか?も検討しなければなりません。
自社の場合、最終的には現在Cookieの記載をしているところ(トップページからMAX2回のクリックで到達可能)に、原則表形式で挿入することにしたのですが、このあたり、検討当時はドンピシャのお手本が見当たらず、その道のプロを自称する?弁護士も欲しいアドバイスはくれなかった…「何かいいお手本ないですか?」の答えが「総務省から雛形は出ていません」だったし。

蓋を開けたら書き方は表形式か箇条書きの二択

改正法施行直後の今、よそはどのように対応されているのか。ざっとみると、ミニマムラインは概ね以下の5点のようです。

  1. 送信先の名称*1
  2. 送信する情報
  3. 自社での当該情報の利用目的
  4. 送信先のプライバシーポリシーのURL
  5. オプトアウトのURL(あれば)

上記のとおり、このうち1〜4は法定記載事項で、5はデファクトスタンダードになりつつあります。「(送信先における)利用目的」がプライバシーポリシーでいいのか?という疑問もありますが、これはそれでよいとされています(総務省のFAQ問4-6)。率直に言って、ツール提供先の利用者が読むことを想定して書いている企業がどれほどあるのか…と思いますが。

そしてスタイルは、表形式と箇条書き形式の2パターンに分かれるようです。表形式が省スペースかつ見やすいと思うのですが、アプリの仕様などで難しい場合があり、箇条書き形式になるのかなと推測しています。数が少ないと箇条書きで丁寧に書くという判断もあるんですかね。

本当に「電気通信役務」を「他人の需要に応ずるために提供」しているのか

「何とか形はととのえた。競合他社を見渡しても、同じようなレベル感で対応している。」ということが施行後に確認できたので、ほっと一息ついたところですが、今も頭をもたげるのは、「本当に自社は対応が必要だったのか」ということ。

自社の商品を購入してもらうために潜在・既存顧客向けに発信する情報(例:健康コラム)は、自社の情報ではないけれど、「電気通信役務」を「他人の需要に応ずるために提供」しているといえますかねぇ。

電気通信事業参入マニュアル(追補版)ガイドブック

 

*1:サービス名を併記するところもあれば、サービス名しか書いていないところもありました。条文やガイドラインの解説を読むと名称でないとマズいような…