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大阪で働く法務パーソンのはなし

受動喫煙問題と喫煙の自由

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最近、「健康経営」というものが流行っていて、「健康経営優良法人」や「ホワイト500」といった認定を受けようとする企業が増えています。

認定を受けるには、一定の基準をクリアしないとなりませんが、そのひとつとして受動喫煙対策への取組みがあります。

健康経営とは

経済産業省のサイトによれば、「健康経営」とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」だそうで、従業員等へ健康投資をすれば、パフォーマンスが上がって、結果として企業価値も向上するということのようです。

そして、健康経営を実践している企業を認定するのが「健康経営優良法人認定制度」であり、認定を受けた企業はそれを表すロゴが使えたりする、というしくみです。この認定を取ろうと、我が社も昨年から試行錯誤しているようです。

受動喫煙対策は必須の認定要件

認定を受けるためには、所定の基準をクリアしなければならないのですが、そのひとつに受動喫煙対策に関する取組みがあります。また、事業所を全面禁煙にするか、完全分煙にする必要もあるようです。

そもそも、来年春施行の改正健康増進法でも、原則として屋内は禁煙となり、屋内で喫煙するには一定の基準をクリアした喫煙室を整備せねばならず、喫煙者への包囲網は年々厳しさを増しています。

www.mhlw.go.jp

受動喫煙対策=就業時間内禁煙?さらに喫煙習慣にもアプローチ

法改正の後押しもあってか、就業時間内は禁煙とする企業が増えているような印象があります。また、喫煙者は採用しないという方針を打ち出した企業も聞くようになりました。「喫煙者を採用しない」ことは、性別や年齢で差別するものではないので、セーフな基準と解されます。

我が社では「執務スペースでは禁煙」で健康経営優良法人の最低限の基準をクリアしようとしているみたいなのですが、その認定を維持するためには、これからも受動喫煙対策を継続的にレベルアップしていかねばなりません。

そこで、我が社は、「喫煙率マイナス10ポイント」を掲げることにするそうです。「健康経営」の趣旨(従業員等の健康増進で企業価値向上につなげる)を考えると、喫煙習慣そのものに取り組む必要があろうという判断からと思います。

喫煙の自由はないのか?

受動喫煙から従業員等を守ることは大変重要なことです。したがって、就業時間内禁煙はぜひやってほしいと考えています。「たばこ休憩」の不公平感を払拭するにも有益でしょう。

しかし、「喫煙率を下げる」つまり、「たばこをやめよう」と言われるのはどうなんでしょうか。禁煙したい人を会社が応援するというなら大いに結構だけれど、「喫煙者は会社にいりません」と言われているようで、推奨しにくい取組みに感じられます。

喫煙者のほうが発症しやすい病気があるのは事実で、そういった病気に罹患せずに元気に長く、生産性高く働いてほしいという会社の思いもわかるけれど、就業時間内はしっかり働くんだから、そこはそっとしておけないものか。仮に、それによってパフォーマンスが落ちるのであれば、それは給与で評価されるべきではないでしょうか。

他にも、我が社では、健康経営として、従業員等に運動習慣を身につけさせたり、肥満などで生活習慣病のリスクがある従業員等に指導したり、といったことを目論んでいるようです。

希望者に提供するのは全く問題がないけれど、運動習慣や食事習慣をヒアリングしたり、健診結果を使ってアプローチしたりするのは、お節介甚だしい。健康な人しか働いたらダメなのか、太っている人や病気を持っている人がいたらダメなのか。

と、指導を受けるかもしれない私はひとり憤ってしまいました。