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大阪で働く法務パーソンのはなし

法務パーソンの目標設定(BUSINESS LAWYERSより)

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直近のBUSINESS LAWYERSの記事に、「法務パーソンの目標設定」という連載もの(全5回)がありました。

過去にBUSINESS LAWYERSのアンケートで取り上げて欲しいテーマとして回答した記憶があり、私の企画案が通ったのではないか?と密かに思っています(そんな人、ごまんといるはず…)。

ビジネスパーソンなら誰しも頭を抱える「目標設定と評価」ですが、法務はとりわけ難しいのではないでしょうか。その理由は、法務部門の歴史の浅さによる(=知恵の蓄積が少ない)のではないかと、私自身は感じています。

現場の意見はネガティブ強め?

連載では、現場の意見として次のような不満?が紹介されていました。

  • リクエストに応じてサービスを提供するので、一人ひとりについて重点的に行うべき仕事を網羅的に目標として定めることは難しい
  • 非定型的かつ難易度の高いものについては、評価が難しい
  • 法務の仕事はそもそも定性、定量で測れない
  • どの基準で何を達成しても、それ自体が本当に会社の方針に適合しているかどうかわからない

私も、法務は、いつどんな案件が舞い込んできたり、急転直下の展開を迎えるかわからないことが多いので、あらかじめ定めた目標の達成度合いだけを測ることは不適切と考えます。また、専門性を発揮してその案件に尽くし、利益や貢献を会社にもたらしたか、ということをどのように測ればよいのか、答えの出ない自問自答を繰り返しています。

最大の課題はミッションが定まっていないこと

記事に登場された専門家によれば、法務部門の人事評価制度の最大の課題は次のとおりだそうです。

 

法務部門における人事評価制度の最大の課題は、法務部門そのものの組織としてのミッションや目標が明確に定まっていないことだと言えます。企業の事業戦略において法務部門が果たす役割は非常に大きいものですが、表面に現れる部分として法務部門の果たす役割にまで落とし込めている企業は少ないのが現状だと思います。それによって、法務部門の社員1人ひとりの個人目標もまた、明確にできない点がボトルネックになっていると言えます。まず法務部門長や法務担当役員が、経営層と議論し、法務部門のミッションを明確に定めることが必要です。

SAPジャパン株式会社 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 北アジア統括本部長 南 和気 氏

つまり、経営陣と法務部門の意思疎通が足りないというわけですね。

そして、ミッションが決まれば、以下のような構造で各人に合わせた目標設定をすることを推奨されていました。

  1. 個人目標
    MBO定量的な目標)
    ②行動目標(定性的な目標)←仕事の品質やチームワーク、意欲など
  2. 組織目標(組織全体で共有し、評価は個人ごとに変わらない)

我が社の評価制度は、まずは部門目標を設定し、それとリンクする個人目標を設定するとともに、期末に行動評価を行うので、専門家のおすすめに近い形ではないかと思います。しかし、これで品質の評価をすることは、なお難しい。「行動目標で品質を測る」というのは、結局主観的な評価になり、私のさじ加減で決まってしまうので、被評価者の納得感としては不十分ではないでしょうか。

目標設定の目的は成長支援と割り切る

連載の最後には、目標設定を行う目的として以下の3つが紹介され、成長支援として行動変容を促したり、組織目標を達成したりするには、やはり定量目標を持つことに意味があるのではないかと提案されていました。

  • 被評価者の成長支援
  • 被評価者の給与決定
  • 組織目標の達成

なるほど確かに、中間管理職に給与決定権はないので、成長支援ツールと割り切り、本人の行動変容を促していくには、定量目標や「●●ができるようになる」といった明確な定性目標がふさわしいといえそうです。

「適切な定量目標」は本当に作れないか?

我が社も基本的には定量目標を求めるので、「契約処理件数●件」みたいな目標をメンバーに設定させているのですが、そのほかに設けている定量目標には次のようなものがあります。

  • ●回の研修を実施する
  • 研修において総合評価●以上を得る
  • ●回以上の外部セミナーを受講する

さらに、BUSINESS LAWYERSの記事では、「ファーストレスポンスを●日以内にする」といった目標の紹介もありました(これをするには分析ツールが必要ですが…)。

もちろん、これらが品質の評価であるとか、品質を数値で測ったとは言い切れませんが、それは他の部門も同じことです。試行錯誤しながら適切な指標を見つけていくしかないのかなと思います。

ほかに私が測ってみたい・測る価値があると考える指標には、以下のようなものがあり、いずれもクライアントである他部門から評価してもらう構想です。

  • 総合満足度
  • スピード満足度
  • 内容満足度(期待に沿う(か超える)ものになっているか?)
  • プロフェッショナル度(法的知見に裏打ちされた支援ができているか?)
  • プロジェクト案件のお声かかり度
  • 契約確認割合(契約書チェックを必ず受けるか?受けない理由は?)
  • 相談割合(迷ったとき法務に相談するか?)

法務部門はクライアントあってこそ成り立つ部門で、360度評価(CS満足度調査)はかなり有益だと思います。ただの自己満足になっていないかチェックするためにも、他部門からのフィードバックはぜひもらいたいところですが、こういうチャレンジングなことをしたい部門はほかにないらしく、自分たちだけ実施することがためらわれる今日この頃です。