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大阪で働く法務パーソンのはなし

有事の優先順位

今年から、クライシス発生時以外は危機管理活動に参加しないことになり、今回の新型肺炎対応も、決まったことのシェアだけ受けています(つまり、現段階ではクライシスの認識ではないということ…)。関係者は一生懸命やっていると思いますが、外から見るとまた違って見えるものですね。

移動・集合禁止→時差出勤導入 but 在宅勤務は不可

当社では、先週から海外出張は禁止され、国内出張や不特定多数が集まる会合・セミナーの参加自粛となりました。先週には、全国の部門長が集まる、四半期に一度の大きな会議が予定されていたのですが、多次元中継に変更したようです(支障なく終わったみたい。それも哀しいような…)。

続いて、公共交通機関を使って通勤する社員に対しては、時差出勤を認めました。ただ、都心の事業所は山手線や御堂筋線が最寄駅なので、混雑緩和の恩恵をどの程度受けられるかわかりません。

気持ち的には在宅勤務を認めたいのでしょうが、グループ社員の過半数は工場や外回りの仕事ですし、現時点ではVPNもない。結局、出張がなくなったという以外、いつもと変わりません。お取引先からは、マスク着用や出禁を求められるところも出てきたので、当面は事業を縮小してもよいように思いますが…

政府の休校要請が出た後、考えることは?

危機管理チームでは、このところ、もし社員に感染者が出たらどうするか?を中心に考えていたようです。全国に100以上の事業所があり、万単位のお取引先や一般のお客様への説明をどうやってするのか?ということを。「お客様第一」を掲げるのだから、正しいことでしょう。

そんな検討をしている最中、政府から休校の要請が出ました。その直前、すでに大阪市は休校を発表していました。唐突感はあるし、それが効果的なのかわからないけれど、とにかく今日から学校はお休みです。政府はできることをなんでもするらしい。では、会社は?

「子どもが心配だから在宅勤務したいってことは、業務に集中できないよね。もし認めるなら、給料何割かカットできないの?」と言った人がいたのですが、できません。

正解はない。でも、こんなときこそベストを尽くしたい

今回の件で、早い会社さんは、2月の上旬から一斉在宅勤務とされていました。そして、緊急事態宣言や今週からの一斉休校を受けて、急遽全面的な在宅勤務をお認めになった会社さんもあります。時差出勤を義務付けられた会社さんも。

こんな事態に正解はないから、できるだけ正しい情報を集めて、とりうる中でもっとも良いと思われる手段で乗り切りたい。お客様も、お取引先も、社員もできるだけ犠牲にせずに。準備不十分だとしても、大胆な決断をされた会社さんは心から尊敬します。お客様ももちろん大切だけれど、まずは社員から支持される会社でありたいものです。

大企業だから、小規模だから、オーナー企業だから…対応や決断が早い理由をそのように説明する人もありますが、結局リーダーシップを発揮できる人が中枢にいるかどうか、ではないかと思います。台湾のように。

「営業秘密」はあるか?

顧問弁護士と在宅勤務を認めるリスクを話したとき、「情報の持ち出しルールを弱めるべきでない」と言われました。それは、至極真っ当な見解に思えます。

でも、繰り返しですが、我が社にそんな「秘密」あるかなぁ…個人情報以外はそれほど厳格に運用しなくてもよいのでは?と個人的には思います。だいたい、ウチの営業マンは発売前商品を持ち歩き、外で大きな声でお客様やお取引先と電話しているじゃないか。

「うまくいっていること」に目を向ける

個人的には、会社の対応に不満もあるのですが、週末に読んだ本より。

望んでいない結果を変えるには、「うまくいっていること」に目を向けようとありました。

映画「アポロ13」でのワンシーン。ヒューストン管制センターが「じゃあ、いまうまく動いているものは何なんだ?」とアポロ13号のクルーに聞きます。この質問が、事態を絶望的だと捉えていたクルーの意識を有効なリソースに向けさせ、問題解決への道筋を作り出したというもの。

我が社でうまくいっていること。感染者はまだいない。とりあえず事業は回っている。社員に2週間の休業手当を払うくらいの現金はある。公共交通機関を使わなくても出勤できる社員がそれなりにいる…まだほかにもありそうです。