当ブログで現在もっともアクセスが多い記事のひとつは、「販売協力金支払契約と印紙税」という記事です。
この記事の中で、製造委託契約(製作物供給契約)のリベート契約はどうなるんだ?と問題提起していたのですが、このたび一定の結論を得たのでまとめておきたいと思います。釈然とはしないのですが。。
論点は第7号文書に該当するかどうか
この問題の論点は、リベート契約書が印紙税法の第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当するかどうか、です。
該当するなら4,000円の印紙が必要だし、該当しないなら不要。
では、第7号文書の要件はどうなっているかというと…
- 営業者の間における契約であること
- 売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負のいずれかの取引に関する契約であること
- 2以上の取引を継続して行うための契約であること
- 2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうちの1以上の事項を定める契約であること
- 電気又はガスの供給に関する契約でないこと
リベート契約書は第7号文書
以上5つの要件への当否を考えてみます。
ひとつめ。リベート契約書は、営業者間の契約なので、該当。
ふたつめ。製造委託は、印紙税法上は「請負」とみるのが一般的だと思うので、該当。
みっつめ。通常はボリュームディスカウント的要素があり、継続取引が前提なので、該当。
よっつめ。「●を●ケース以上製造したら、1ケースあたり●円バックする」という約束が通常で、これは目的物の種類、取扱数量、単価を定めているといえるので、該当。
いつつめ。該当。
つまり、すべての要件を満たし、第7号文書に当たります。すなわち印紙税は4,000円。以上はリベート契約書を独立した契約と見た場合ですが、製造委託契約の変更契約と捉えたとしても重要事項(上記要件4)を含むので、やはり第7号文書ということになりそうです。
なお、「一定期間中の支払額の●%をバックする」という書き方だと、目的物の種類や取扱数量、単価を定めていることにはならないので、課税文書にはなりません。
どうにも釈然としない
つまり販売協力金・リベートに関する契約書は、通常、原契約が売買であれば課税なし、製造委託であれば4,000円の印紙税がかかるということです。この違いの合理的説明は難しい。。原契約が売買だとしても、第7号文書の要件はすべて満たしてしまいますから。
さらに話がややこしいのは、製造委託(製作物供給契約)というのは、民法的には非典型契約で、売買的でもあり、請負的でもあるということです。印紙税法や下請法的には請負契約と整理されますが、会計・税務的には売買と処理されることもあります。(つまり、食料品の場合、加工賃としての消費税10%でなく、売買代金としての消費税8%で処理する。)
売買なのか、請負なのか。課税文書なのかそうでないのか。
答えを得てもまったく釈然としませんが、「製造委託の販売協力金支払契約書には印紙4,000円を貼る」が、一応その道のプロともお話した見解であります。
原契約が売買で受注生産のもの(下請法上は「製造委託」に該当)は、課税文書ではないってことでいいんですかね。。