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大阪で働く法務パーソンのはなし

登記の将来

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先日の記事で、取締役会でweb会議をするときは、議事録にも「web会議システム」を用いたと書いておけばいいのかな?ということを書きました。私は「ウェブ会議システム」とカタカナを使ったものの、法務局や司法書士さん含めて、今のところ問題は起きていません。
この件では司法書士さんを難なくパスできたのですが総会後の登記では、毎回毎回、些細なことで司法書士さんと見解の相違が生じます。今回も?司法書士さんと一悶着ありました。

先例重視すぎる

当社では、登記周りの書類は法務が作成することになっているので、今年に入ってから、子会社含めて数社分の定時株主総会の関連書類をチームで作成しました。ひととおり作成したら、確定させる前に登記申請をお願いする司法書士さんに見てもらうのが我が社の通例です。しかし、すんなりOKをもらえることがまずありません。

随分昔の話になってしまいましたが、私もかなり数をこなした分野。地方の司法書士さんよりは商業登記に詳しいという自負もあり、毎回受ける細かすぎる(し、正しいとも限らない)指摘に、全身がざわつきを覚えます。。司法書士さんのご機嫌を損ねてもいけないので、基本的にはそのままおとなしくご指摘に従うのですが。

指摘の理由を聞くと「前に一度、法務局に言われたことがあるから」ばかり。。以下は、その一例。いずれも、もとの案で登記できた事例を私はたくさん経験しているんですが。

  • 就任承諾書に「代表取締役社長に選定された」とは書かないでください(どうしても書きたければ、「代表取締役(社長)に選定された」にしてください)。
    ∵「社長」は登記に関係がないから
  • 書面決議時の議事録に添付する提案書兼同意書は、押印のあるものでないとダメです。
  • テレビ会議のときは、役員全員についてどこから参加したか書いてください。

スイッチングコストは低いが…

司法書士さんにも美学があると思うので、「自分は法令や通達をこう解釈する」という信念があればぜひ学ばせてほしいのですが、「前に一度言われたから」ではこちらも拍子抜け。「クライアントの案でも問題ないのでは?」という発想になっていただけないのは悲しい。

司法書士さんを変えるコストはほぼないので、自社に合わないと思えば他の司法書士さんにお願いすればいいんです。あるいは、商業登記は、新卒1年目の私でもやっていたくらいですから、自社でやってもいいんです。しかし、「そこまでしなくても…」というくらい、司法書士報酬も、登記する頻度も低く、また社内の関心も低いので、ズルズルと今日に至っています。

登記申請はDIY化する

現在、代表的な商業登記の書類サンプルは、民事局が公開してくれていて、プロでなくてもある程度の必要書類は作成することができます。さらに、登記申請書類の作成をサポートしてくれるリーガルテック(AI-CON登記LegalScriptなど)も出始めています。登記申請はとても定型的ですし、士業の独占は限定的に解すべきで、もっとテクノロジーが活躍できるよう期待しています。そもそも、毎年のように義務的に登記しないといけないのに、その手続にプロが当然のように間に入るって変。

今でさえ司法書士さんの報酬が低いことが示すように、登記申請の代理は付加価値があまり高くなくて、将来的にはDIY申請が増えていくと推測されます。そのためには、登記申請書が簡単に作成できたり(もちろん、登録免許税の計算もバッチリやってくれる)、申請がブラウザ上で(書類をアップロードすることで)できたりする必要があり、行政のDXに期待が膨らむばかりです。

司法書士さんの未来って

司法書士の行く末は私が学生の頃から案じられていましたが、司法書士さんたちは、どんな未来を思い描いてらっしゃるのでしょうか。先例しか見ないのが司法書士なら、なくなっていくのが自然かな…
ちなみに、代書という意味では、行政書士も同じことが当てはまりそうですが、行政書士さんは、昔から「資格」だけでご飯が食べられる仕事ではなく、それぞれが強みを磨いていらっしゃるので、こちらはたくましく生き残るのでは?と予想しています。