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大阪で働く法務パーソンのはなし

「資本金の額」の変化に注意

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毎年夏は下請取引の書面調査があります。

www.chusho.meti.go.jp


今年は少し締め切りが後ろにずれたようですが、無事に提出完了。

しかしこの調査、子会社は公正取引委員会からくるし、当社は中小企業庁からくるし、それぞれ締め切りが違うし、どういう役割分担なのだろう…

今年からオンラインへ

中小企業庁による調査は、今年から完全オンラインに移行したそうです。例年なら、確か公正取引委員会と同じ緑の分厚い封筒で送ってくるのに、今年はこのはがき一枚↓

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通知はがき(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2020/200625ShitaukeSearch.pdf

この時期に、公正取引委員会又は中小企業庁の書面調査案内がくるとわかっているから見過ごさなかったけど、見過ごしてしまったり、総務が違うところに送って行方不明になったりする可能性も大いにあるような…大事なお知らせは若干の仰々しさが必要です。

初めての試みだからか、同じ質問が重複したり、問いと回答の選択肢が合っていなかったりといった不備があったそうです。うちのメンバーが、さすがに複数発見してしまったので事務局に問い合わせようと思ったら、同じような人が他にもいるのか、全然電話が繋がらない。繋がったと思ったら、「ご名答。サイトは修正済みなのでよろしく。」というような回答で、断りもなく、しれっと修正されていたらしい。

この調査は事業所ごとの回答が必要で、当社のように複数の部署で下請取引がある場合には、各部署に回答依頼をせねばなりません。こちらのスケジュールもあるし、リリース後にこっそり修正されたら困るんですけど…気づかなかったことにしますよ。。

下請事業者名簿

この調査では、「下請取引において下請法を遵守しているか?」という質問に回答するだけでなく、自社の下請事業者のリストを提出しなければなりません。

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下請事業者名簿様式(https://www.shinkoku.go.jp/shinkoku/sitauke/torihiki-chosa

各部がどこと取引をしているのか、法務では知る由がありませんから、リストの作成は、下請法の遵守状況の回答と合わせて各部に依頼します。そして、法務で、ウェブサイト等で所在地や資本金の額をダブルチェックするのですが、毎年1か所くらい誤りを発見します。大抵は、所在地がちょっと違っているくらいなので大したことはないのですが、今年は資本金が違っていました。資本金が3億円超となり、下請事業者ではなくなっていたのです。

下請事業者でなくなったら

下請法の親事業者に課せられた4つの義務と11の禁止事項。下請事業者の合意があってもダメという厳しさです。下請事業者に自由意志などないという前提ですね。

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親事業者の義務・禁止事項等(https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html

当社でも、下請事業者には、そうでない事業者と比べて格別の配慮をしているようですが、下請事業者でなくなれば、その配慮から解放です。支払サイトも長くしてOK!もちろん、独禁法上の優越的地位の濫用に抵触しない範囲で、ですが。

取引先の資本金は定期的にチェックすべし

下請法は、とても外形的な法律です。下請事業者は、資本金の額によってのみ決まるし、下請取引も4類型のみ。

下請取引に当たれば、上記のような義務もあるし、下請Gメンとかいって国も摘発に積極的だし…ということで、取りこぼしのないよう、当社では、下請取引にあたり得る取引(製造委託など)をするときは、基本契約において、資本金の額の変更については書面での通知義務を課しています。
しかし、運用はどうか…?真面目にやってくださる企業ももちろんあると思いますが、現場の人たちにそこまでの注意を求めるのも酷に思います。当社の社員たちも、普段先方の資本金の額を気にして仕事しているはずがありません。

今回は、増資で下請事業者でなくなっていたからよかったものの、知らないところで減資して、いつの間にか下請事業者になるというケースも想定されます。当社は、下請かそうでないかで取引条件を変えているので、減資に気づけなかったら下請法違反をしてしまうことに。「減資を知らなかったから、下請法を守れませんでした」なんて、公正取引委員会は許してくれないですよね(酌量余地はあるかな…)。

やはり、取引先については、各部で年に1回くらいはスクリーニング調査をすべきだと考えます。そのうち、取引先リストをgBizINFOにかけたら、変更の有無が瞬時に見える化されたり、常に連携しておいて変更されればアラートが出たりとか、そんなサービスが生まれたらいいな。