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大阪で働く法務パーソンのはなし

「秘密保持契約の見方」ワーク

久しぶりにじんましんが出るほど多忙なのですが、忙しいのは重なるもので、ただいま新規の研修を立て続けに実施しています。

そのひとつが、企画部門向けの「秘密保持契約の見方」ワークです。数か月前にオーダーいただいていたものがやっと納品できました。安請負は周りにも迷惑ですね…

増殖するNDA

コロナ禍で新しいチャレンジが求められているからか、「●●の取扱い/取組みを検討することになり、相手方から秘密保持契約の提示があったからみてほしい」という依頼が頻繁にあります。企画部門も、現場からの依頼が増えている実感があるらしい。

以前からそうですが、名刺交換くらいの感覚で秘密保持契約を締結しようとする方々が一定数いらっしゃいますね…ちゃんと管理しているのだろうか。

秘密保持契約の見方を学ぶために頭も手も動かす

かねてよりキャパオーバーに苦しんでいる私のチーム。秘密保持契約の確認をするのはいいけれど、もう少し企画部門でも目利きしてくれたらうれしいな…などとぼやいていたら、「では、見方を教えてください!」ということに。

秘密保持契約は新人法務パーソンがノックのようにこなすタイプのものなので、幸い、見方はある程度「型」化できており、法務の経験がない方にも伝えることができます。
そんなわけで、「秘密保持契約の見方」を知っていただく時間を設けることになったのですが、ただ話を聞いているのはつまらない。新人法務パーソンなら、話を聞いた後早晩に本番がやってきて手取り足取り指導を受けられますが、他部署はそうもいかないので、実際に手を動かしてもらうところまでを研修に組み入れました。

法務になりきるワーク

具体的には、「法務になりきるワーク」をしてもらいました。

  • 依頼者役と法務役にわかれる
  • それぞれに情報を渡す(法務役には断片的な情報のみ)

という状態からスタートし、法務役が不明点を確認しながら秘密保持契約のレビューを行うというワークです。

今回の設例は、「ある地方企業の商品を取り扱うか検討するために秘密保持契約を締結することになった」というもので、契約レビューにとって重要な情報(相手方からもらう情報の内容など)から、そうとはいえない情報(相手方経営者の経歴など)まで、法務にとって過不足ありの状態から始めました。たとえば、相互開示型なのに当社が提供する情報の内容は法務に伝わっていないという状況です。
実際、親切にたくさんの情報をくれる担当者も多いのですが、肝心な情報がないよー!というときが結構ありますので。。

ただ、結論から言えば、法務役の社員はあまり上手くヒアリングできていませんでした。
レーニングを受けていない人にとって、「秘密保持契約をレビューするのに必要な情報」が何かなんてわかりませんよね。もちろん、事前に留意点や確認ポイントはお伝えしましたが、そんな簡単にモノにできたら法務だってもっとラクしているわ…

「秘密保持契約を締結する必要があるかよく考えるべき」

ワークで実際に手を動かしてもらった後、「法務だったらこれを追加でヒアリングしてこう直す」という解説をするとともに、「でも、今回の件だったら、仕様書と見積書さえもらえばよくて、わざわざ秘密保持契約を締結する必要があるか疑問」といった話をして終了しました。

参加者からは、秘密保持契約をじっくり読んでみて

  • 「秘密保持契約を締結する必要があるかよく考えるべきだと思った」
  • 「秘密保持契約を締結したらどんな情報を渡しても良いのではなく、重要な情報は開示しないようにしたい」

といった感想が聞かれ、研修の真の狙いが伝わってよかったです。

もらった秘密情報の保管・シェアの作法

研修中、参加者から次のような質問を受けました。

  1. PW付きの電子ファイルをもらって、PWを外してフォルダに保存したら契約違反か
  2. もらった秘密情報は、どこまで共有していいのか

契約書の内容を確認するのは当然として、1については、PWを外したから直ちに契約違反ということにはならないと考えますが、フォルダのアクセス権設定が不十分であれば契約違反になる可能性もありそうです。社員だったら誰でも見れるフォルダに置いておくなどですね。

2についても、「必要な(最小限の)範囲」というのが模範解答ですが、それがどこかが問題なのです。。